酸熱トリートメントは、通常のトリートメントと違って、アイロンを使って髪をきれいに整えられます。しかし施術の順番など、扱い方を間違えると、お客様に迷惑がかかってしまうので注意しましょう。失敗した時の対処法などもまとめてあるので、酸熱トリートメントについて詳しく知りたい人は、参考にしてみてください。
酸熱トリートメントとは
酸熱トリートメントとは名前のとおり、熱を使って酸性成分を髪に浸透させ、トリートメント効果を高める施術になります。主にグリオキシル酸という成分を使うのが主流です。酸熱トリートメントはアイロンを使うため、特にくせ毛の悩みを解消するために使うといいでしょう。
髪の毛がまっすぐになる上に、ツヤがしばらく持続できるというメリットがあるからです。髪がパサついて落ち着かせたいお客様に提案すると、喜ばれますよ。
また髪にコシがでやすいので、エイジング毛とも相性がいいでしょう。意外にも幅広い人に扱えるため、導入しやすいトリートメントのひとつです。
酸熱トリートメントの仕組み
酸熱トリートメントは、アイロンを使って髪をきれいにすると紹介しました。しかしそれを聞いて、「本当にきれいになる?」と思う人もいるでしょう。
じつは酸熱トリートメントというのは、「結合を強くさせて整えるトリートメント」です。結合を強くさせるには、「イミン結合」と「脱水縮合」という反応を使います。
イミン結合 | 新しく作ってできる結合。コーディングができる上に、結合がきれいに整えられるため、ツヤが生まれやすいと言われている。 |
脱水縮合 | イミン結合を強固にするための反応。水分を抜いて化合物を作る。 |
イミン結合とは、上記のように結合を強くさせて、ツヤなどを強化させるために使います。酸熱トリートメントのメインとなる反応なので、覚えておきましょう。
本来はシスチン結合によって、髪がきれいな状態を保てるようになっています。しかしパーマなどの施術も含めて、髪が傷んでしまうとシスチン結合がなくなり、髪にパサつきが生まれてストレスを感じてしまうでしょう。そのシスチン結合の代わりになるのが、イミン結合です。
バラバラになった結合を、仮につなぎ合わせてくれるので、髪がきれいになります。
ちなみに薬剤だけでは酸熱トリートメントの効果が薄いので、熱を使わないといけません。そのアイロンの熱を使うと、脱水縮合といわれる反応が起きます。髪内部にある水分を抜き取り、結合を強固になり、髪がサラサラでツヤ感もアップするわけです。
酸熱トリートメントは、この2つの反応をうまく使って、トリートメント効果を実感してもらいます。
酸熱トリートメントの主要成分
イミン結合によって髪を補修して、トリートメント効果を出すと紹介しました。この酸熱トリートメントの際に必要なのが、グリオキシル酸です。
髪の主成分が「アミノ酸」というのは、美容師なら知っているでしょう。このアミノ酸の中に入っているものがアミノ基であり、アミノ基というのは「塩基性」です。つまり酸性とは正反対の特徴があり、酸性であるグリオキシル酸とくっつく性質を利用して、髪を整えていきます。
そしてしっかり髪の結合が整えられたタイミングで、アイロンを使いましょう。うねったくせ毛がまっすぐになり、結合がしっかりしているため、ツヤまで生まれてしまうわけです。
酸熱トリートメントをしないで、髪にアイロンを使うとパサつきの原因になります。それは次のような流れがあるからです。
- 髪にアイロンで熱を加える
- 髪内部のたんぱく質が変わる
- 空洞ができる
- 水分が逃げて余計にパサつく
アイロンの熱によってできる髪内部の空洞が原因で、質感が悪くなってしまいます。
しかし酸熱トリートメントの場合は、次のような流れがあるため、髪がきれいに仕上がるわけです。
- 髪にアイロンで熱を加える
- グリオキシル酸とアミノ基を反応させてイミン結合させる
- 余計な水分が逃げて脱水縮合が起きる
- イミン結合が強固になる
- アイロンの熱で作られたイミン結合で髪がまっすぐになる
つまり、イミン結合によって空洞がなくなり、むしろ髪がまっすぐになってきれいに仕上がるようになります。
ストレートパーマや縮毛矯正との違い
酸熱トリートメントは、髪がまっすぐになる上に、ツヤが出てきれいに整えられます。これを聞くと、ストレートパーマや縮毛矯正をイメージする人もいるかもしれません。しかし酸熱トリートメントとストレートパーマは、仕組みが全く違うものなので、覚えておくといいでしょう。
ストレートパーマや縮毛矯正 | 結合を一度切り離してつなぎ直してまっすぐに整える |
酸熱トリートメント | 結合を切り離さずにまっすぐに整える |
簡単に紹介すると、上記のような違いがあります。つまり「結合を切るかどうかの違い」です。
ストレートパーマや縮毛矯正は、シスチン結合を切ってアイロンでまっすぐにしてから、薬剤を使って結合を再度つなぎ合わせます。しかし結合をつなぎ合わせる際に、すべての結合が元に戻るわけではありません。
アイロンや薬剤の傷みによって、結合が元に戻らない部分も出てくるだけに、施術後の傷みが気になってしまうお客様も出てくるでしょう。
しかし酸熱トリートメントは、イミン結合によって一時的に結合を補強するため、むしろ結合を切らずに髪をきれいに整えられます。もちろん髪をまっすぐにする力は弱いですが、傷みを補えるトリートメントとして使いましょう。
プロがおすすめする酸熱トリートメント
酸熱トリートメントは、使う商材によって効果が違います。それは配合されている成分に、それぞれ違いがあるからです。お客様の希望する髪質によって、酸熱トリートメントを使い分けられるようになれば、メニューの開発にも役立つでしょう。
主に今回紹介した、グリオキシル酸が主成分の酸熱トリートメントに厳選しました。主成分が同じでも、仕上がりに違いがあるので、確認してみてください。お客様の髪質によって商材を使い分けると、喜んでもらいやすくなります。もちろん施術のやり方を工夫すると、質感にも違いが出てくるので、試してみるといいでしょう。
ハホニコはトリートメントを販売するブランドとしても有名ですが、酸熱トリートメントも人気です。他の酸熱トリートメントより、比較的グリオキシル酸の配合量が多く含まれているのか、トリートメント効果が高いといわれています。
また施術によって受けた髪のダメージを補修しやすい上に、エイジング毛にも髪質改善しやすいでしょう。コシが出やすいので、エイジング毛で悩んでいるお客様にもおすすめです。髪が柔らかくなってきても、グリオキシル酸が豊富に含まれているため、比較的髪が硬くなりやすくなっています。
もちろん施術のやりすぎで傷んだ髪にも、補修効果によって傷みが抑えられるでしょう。幅広い人にアプローチしやすいので、酸熱トリートメントで悩んでいる人は、とりあえずハホニコのトリートメントを選んで損はありません。
メーカー | ハホニコ |
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ブランド | グリニコ |
サイズ | 500g |
サロン価格 | |
商品番号 | 119307 |
スタイリング剤で有名なアリミノにも、酸熱トリートメントが販売されています。ハホニコとは違い、比較的髪の仕上がりが柔らかくなるため、剛毛の人と相性がいいトリートメントでしょう。
ちなみにアリミノの酸熱トリートメントは、厳密にいうとグリオキシル酸ではありません。分子量が少し大きい成分になっているので、他の酸熱トリートメントより、柔らかい質感が実感できているようです。極端な剛毛で悩んでいる人以外にもアプローチしやすいので、どの程度の髪質なら問題なく使えるか試しに使ってみましょう。
もちろん酸熱トリートメントには変わりがないので、コシを出したい人にも扱って問題ありません。扱い方も通常の酸熱トリートメントと同じです。
メーカー | アリミノ |
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ブランド | クオライン |
サイズ | 400g |
香 り | フルーティフローラル |
サロン価格 | |
商品番号 | 121044 |
酸熱トリートメントと他のメニューの同時施術はできる?
酸熱トリートメントは、くせ毛の女性にとって嬉しい商材です。しかし髪がきれいに整えられる施術だけに、別の施術と同時に行えるのかどうか気になる人も多いのではないでしょうか?
じつは化学反応をうまく使ったトリートメントだけに、覚えておくべきポイントがあります。それは手順と扱い方さえ覚えていれば、「酸熱トリートメントで施術ができなくはない」ということ。正しく使えば、酸熱トリートメントをしていても、施術は可能です。
とはいえ、これが言えるのはカラーだけでしょう。しかも効果が薄まってしまう可能性があるので、時間を空けるのがベストです。
パーマに限っては、ストレートパーマや縮毛矯正も含めて、同時併用は失敗してしまう可能性があります。
酸熱トリートメントの手順と注意点
酸熱トリートメントの使い方の基本は、次のようになるので覚えておきましょう。
- 髪をシャンプーで洗って7割乾かす
- 酸熱トリートメントを塗布して加温しながら放置
- しっかりトリートメントを洗い流す
- 髪をしっかり乾かしてアイロンで髪を伸ばす
これで髪がきれいに整えられます。しかし同時に施術をするとなれば、意識するべきポイントがあるので、やり方には注意しましょう。
カラー | 色落ちする |
パーマ | カールが出ない |
少なくとも酸熱トリートメントを同時に行うと、上記のように施術を失敗してしまう可能性があります。そのため、ここでいうポイントとは、「酸熱トリートメントとの同時併用は時間を空ける」です。少なくとも10日以上は時間を空けましょう。
酸熱トリートメントのメリット
酸熱トリートメントは、通常のトリートメントより受けられるメリットが違います。アイロンを使ったトリートメントだけに、恩義を受けられる人に違いがあるので注意しましょう。
- 傷みを抑えながら髪をまっすぐにできる
- ツヤが出せて髪のおさまりもいい
- エイジング毛にも効果が期待できる
- 持続力が比較的高め
この中でも特にくせ毛の女性には、効果が実感してもらいやすいので、声かけるべき人をピックアップしてみてください。
また髪がきれいになる上に、その髪の状態が持続しやすいのも、酸熱トリートメントのポイントのひとつです。アイロンによって髪を補強できるため、自分でトリートメントをする以上の効果を実感できてしまいます。
中でもくせ毛ではなく、エイジング毛にもいいのは意外でしょう。結合を強固にする効果があるため、コシが出やすく、喜んでもらえやすいのでおすすめです。
酸熱トリートメントが向いている人
酸熱トリートメントは上記のように、一般的なトリートメントより、効果を実感しやすくなっています。しかし向いている人と、そうでない人がいるので注意しましょう。
- くせ毛で髪が広がりやすい人
- よくストレートアイロンを使って髪を伸ばす人
- サロントリートメントを頻繁にしたくない人
少なくともくせ毛で悩んでいる女性は、酸熱トリートメントと相性がいいでしょう。
またおさまりがよくなるのも、酸熱トリートメントのポイントのひとつです。広がった髪をどうにかしてほしいと、お客様から相談されたのなら、酸熱トリートメントを提案してみてください。
酸熱トリートメントのデメリット
酸熱トリートメントはメリットばかりのように聞こえますが、実際のところ、デメリットもあります。使い方次第ではお客様に喜んでもらえやすいですが、注意するべきポイントがあるので、覚えておきましょう。
- 施術との併用は再来店してもらわないといけない
- 美容師によっては仕上がりにムラが出やすい
- 臭いが苦手な人がいる
まず上記で紹介したように、酸熱トリートメントをすると、施術をしないほうがいいという点です。
パーマの場合は、カールが出にくくなり、カラーは色落ちをしてしまいます。10日以上空けて来店してもらう必要があり、手間がかかるのが嫌なお客様は面倒に思ってしまうでしょう。もちろん日を空ければ、トリートメントの効果を実感してもらえるので、言い方次第です。
またアイロンを扱うトリートメントだけに、美容師によって、髪がまっすぐになるかどうかも違いが出ます。これも気にするお客様にとっては死活問題です。髪をまっすぐにしたいお客様には、酸熱トリートメントをよく扱っている美容師に任せたほうが無難でしょう。
さらに髪質によっても、効果が出にくい場合があります。
ちなみに酸熱トリートメントは、名前のとおり酸が含まれているため、独特の臭いが気になるお客様もいるでしょう。事前に聞いておけば、そこまで気にする必要はありませんが、注意はしておくべきです。
酸熱トリートメントは使うべきではない人
酸熱トリートメントは、どの人でも合うトリートメントではありません。あまり使わないほうがいいお客様もいるので、髪質をよく見てから提案するようにしましょう。
- くせ毛がひどいお客様
- 剛毛で硬い髪質のお客様
- ダメージがほとんどないお客様
少なくとも上記の髪質をしているのなら、酸熱トリートメントは不要です。
特にくせ毛の程度がひどいお客様には、酸熱トリートメントは控えましょう。くせ毛の人におすすめのトリートメントと紹介しましたが、あくまでトリートメントです。結合を切らずに髪をまっすぐにする仕組みのため、くせ毛の程度が強いのなら、あまりまっすぐになったという実感がありません。
また剛毛で硬い髪質のお客様も、あまり相性がよくないでしょう。それは髪の結合を強固にさせるだけに、コシが出やすい特徴があるからです。硬い髪の人はコシが出るほど、髪が硬くなるのは嬉しくありません。
ダメージ毛でないお客様も、相性がよくないので無理に提案しなくても大丈夫です。酸熱トリートメントは酸性に傾けるトリートメント。健康毛も弱酸性になっているため、あまり効果がわかりません。
酸熱トリートメントが失敗したらお直しは可能?
酸熱トリートメントは、傷みを抑えられる上に、髪がまっすぐにできるという特徴があります。トリートメントだけに、失敗しても大丈夫と思うでしょう。
しかしアイロンを使うだけに、失敗してしまうと次のような状態に髪がなってしまいます。
- 傷みがひどくなる
- 髪が逆に広がる
- あまり効果を実感できない
このようにお客様が感じないように、トリートメントをしたほうがいいでしょう。
酸熱トリートメントで失敗するのは、極端に酸性に偏ってしまうのが原因です。これを髪と同じ弱酸性に戻るように施術すれば、お直しができます。つまりアルカリ性の薬剤を付けると、髪がきれいに元に戻るでしょう。
相性がよくない髪質のお客様を施術して、「お直ししてほしい」と言われる場合は、別の施術を提案したほうが無難です。酸熱トリートメントの効果が出にくいので、同じように施術しても変化がないでしょう。
酸熱トリートメントは今までと違うトリートメントを探している人におすすめ!
酸熱トリートメントは、アイロンを使って結合を強固にさせて、まっすぐにしつつツヤを出せるトリートメントです。そのためくせ毛で悩んでいるお客様だけでなく、エイジング毛やダメージ毛にも効果を実感しやすくなっています。しかし扱い方を間違えると、逆に髪がパサついて失敗してしまうでしょう。
またカラーやパーマなどの施術と併用して使うと、あまり効果を実感できません。お客様からクレームが来てしまうので、必ず10日以上時間をおいてから、酸熱トリートメントをしてください。
とはいえ、縮毛矯正やストレートパーマより髪がきれいになるので、積極的に提案したいトリートメントのひとつです。扱い方をマスターすれば、新メニューを増やせられるので、うまく活用してみましょう。