美容師が手荒れになると、ストレスで辞めてしまう人も多くいるでしょう。ところが正しい対策ができていれば、まだまだ現役を続けられるようになります。とにかく手荒れになったら病院に行くこと。そして手荒れを悪化させない意識で、毎日営業を続けてみてください。これだけでも手荒れと一緒に、美容師生活が送れるようになるでしょう。
Last Updated:2021/6/22
美容師が手荒れになる割合
美容師は比較的手荒れを起こしやすい職業として有名です。それは手荒れしやすい薬剤を使う頻度が多いのに加えて、シャンプーの頻度が多く、刺激に耐えられなくなるからでしょう。
過去に皮膚炎があったか? | 割合 |
---|---|
あり | 53.0% |
なし | 47.0% |
東北労災病院にアンケートによれば、美容師が過去に手荒れを経験した人の割合は、半分以上だったという結果が出ています。
ちなみに理容師に、手荒れに関して同じアンケートをしていました。その結果は、経験ありと答えた人が「28.3%」。これを見るだけでも、美容師が手荒れを起こしやすいというのがわかるでしょう。
手荒れが原因で辞める美容師も多い
多くの美容師が手荒れで悩んでいるのは確かですが、症状が悪化して辞めてしまう人も少なくありません。それは手湿疹になってしまうからです。手荒れが進行すると水泡でかゆみが出てしまい、ひび割れなどで手が痛くなるのが手湿疹の特徴になります。
本来手湿疹が出た場合は、ステロイドを使って1週間ほどで完治させるのですが、美容師の場合はステロイドを塗っても治りにくいでしょう。薬を手に塗ってもシャンプーなどで、洗い流されてしまうから。医師からも仕事を辞めるしかないと言われ、美容師を続けるのを諦めてしまう人も多くいるわけです。
美容師の手荒れは何が原因?
美容師が手荒れになってしまうのは、大きく分けて5つになります。どれも美容師として必要なことなので、正しい対処法を続けないと手荒れを悪化させてしまうでしょう。
- 水仕事
- シャンプー
- パーマ液
- 染毛剤
参照:手あれの原因いろいろ~皮膚にダメージを与えるもの~(PDF資料)|労災疾病等医学研究普及サイト
美容師が手荒れを起こしてしまうのは、水で皮脂が洗い流される頻度が多いからです。皮脂はバリアの役割があり、余計な刺激を感じにくくする役割があります。しかしシャンプーや水仕事によって、必要な皮脂がなくなり、ちょっとした刺激に体が反応して手荒れを起こしてしまいます。
また薬剤と触れ合う機会が多いのも、手荒れが悪化するポイント。特に皮脂がなくなった状態で皮膚が直接刺激物を触ると、手荒れの引き金になります。
美容師の手荒れの原因①
シャンプーの際のお湯や水も手荒れの原因に
皮脂が洗い流される原因の多くは、水仕事が多いからです。そもそも美容師以外でも、手荒れが起きやすい仕事があります。その多くは水仕事が多い職種。油汚れを落とすために、お湯をよく使う飲食業でも手荒れが頻発しているでしょう。
美容師もシャンプーの際は、お湯を使うので、皮脂が洗い流されます。それに加えてシャンプーを使うため、より一層皮脂がなくなり、ちょっとしたことで手荒れが発症してしまうわけです。
つまり美容師の手荒れ対策の一歩は、シャンプーやお湯に触れないこと。ゴム手袋をするなどして、触れ合う機会を減らしてしまいましょう。さらに洗い流された皮脂を取り戻すために、ハンドクリームを頻繁に付けるのもおすすめです。
美容師の手荒れの原因②
もともと皮膚が弱い、アレルギーがある
手荒れが悪化してしまうのは、アレルギー反応も原因のひとつ。もともと皮膚が弱いと、アレルギーによって手荒れも悪化してしまうわけです。アレルギー反応を抑えるためには、軟膏などで被膜を作ったほうがいいという研究結果も出ています。
成育出生コホート研究におけるランダム化臨床研究介入試験で、新生児期からの保湿剤塗布によりアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することが分かりました。
またアレルギーが悪化するのは、ストレスも原因と考えられています。そのため、なるべくリラックスできる環境づくりも大切です。
美容師の手荒れの原因③
パーマ液やカラー剤による手荒れ
軟膏などで皮脂を整えたとしても、美容師が使う薬剤を皮膚に直接触れていると、手荒れが悪化してしまいます。特にパーマ剤やカラー剤は、手荒れを起こす成分はたくさん含まれているので注意しましょう。
手荒れを起こす成分 | |
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パーマ剤 |
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カラー剤 |
|
これらの成分はほんの一部です。美容師が扱う薬剤には、他にもたくさん手荒れを引き起こす成分がたくさん使われています。施術をする際には、必ずゴム手袋をして皮膚に刺激を感じさせないようにしましょう。
また刺激が弱い薬剤を選定するのも、手荒れを予防させるのにおすすめです。お客様にもメリットを説明して、納得してもらってから薬剤を使い分けてみてください。
ゴム手袋でも手は荒れる!?
ここまで手荒れの予防には、ゴム手袋をおすすめしていました。確かに直接皮膚に刺激物を触れるよりは、効果があります。ところがゴム手袋では、手荒れを完全に予防できません。それはゴム手袋にも、以下のようなアレルギーを起こしてしまう添加物が含まれているからです。
- ラテックス蛋白
- ゴムの硬化剤
- ゴムの老化防止剤 など
長時間使い続けていると、皮膚がふやけた状態になるため、手荒れを悪化させてしまいます。つまりゴム手袋を使う場合は、こまめに外して手を乾燥させるのもポイントです。
美容師特有の手荒れの治し方
美容師が手荒れを悪化させる原因がある程度把握できれば、治し方が気になるでしょう。手荒れが悪化した時に治す場合は、大きく分けて3つのステップに分かれます。
- 手荒れを改善していく
- 営業中の手荒れ予防対策
- 寝る前のケア
それぞれどのような方法で手荒れを治していくのか、具体的に紹介します。
美容師特有の手荒れの治し方①
手荒れを改善するには皮膚科に行くことが必須
まず手荒れを改善させるためには、皮膚科に行きましょう。自分で手荒れを改善させるのは難しいだけでなく、間違えた方法を試しがちです。医師に相談して、正しい方法を聞いてみてください。
また皮膚科に行くと、炎症を抑えるステロイドも処方してくれます。これが手荒れを改善させる一番のポイントです。症状に合った強さのステロイドを処方してくれるので、安心して使えるでしょう。
美容師特有の手荒れの治し方②
営業中に手荒れを悪化させない
皮膚科に行って手荒れを改善しようとしても、また営業中に手荒れを悪化させれば、今までの対策が水の泡になってしまいます。そこで手荒れを悪化させない予防対策を、日ごろから意識しておきましょう。
- 施術中はゴム手袋を使う
- 軟膏で皮膚を保護する
- 手をほどほどに乾燥させる
手荒れを悪化させるひとつの原因は、必要な皮脂がなくなってしまうこと。これを抑えるために、ゴム手袋を使いましょう。
シャンプーを使う頻度が多い美容師は、お湯などの水分に触れる機会が、他の人より多いでしょう。そのため皮脂が洗い流されて、刺激に弱くなってしまいます。それを防ぐためにゴム手袋は必須です。
またパーマ剤などの刺激に強い薬剤を扱う時にも、ゴム手袋が刺激から守ってくれます。施術中には必ず、ゴム手袋をしておいてください。
それでもどうしても皮脂がなくなる場合があるため、軟膏で保湿しておくと安心です。
- ステロイド
- ハンドクリーム
上記のように軟膏とは、どの種類でもいいでしょう。
炎症を起こした手荒れの場合は、ステロイドを中心に使うのがおすすめです。そこまでひどくない手荒れの場合は、ハンドクリームで手を保護しましょう。
長時間ゴム手袋をしてしまうと、手が蒸れて逆に手荒れを起こす人もいるはずです。その場合は、定期的にゴム手袋を外して、手を乾燥させましょう。
美容師特有の手荒れの治し方③
寝る前のケアも忘れずに続けよう
営業中に予防対策をするのも大事ですが、寝る前にケアするのも、手荒れを悪化させないポイントです。
- 寝る前に爪を切っておく
- 軟膏で保湿をしておく
- 睡眠の質を上げる努力をする
手荒れは場合によっては、かゆみを引き起こしてしまいます。かゆみは一般的に代謝がよくなってくるとかゆみが増して、手荒れを悪化させてしまうかもしれません。
そこで寝ている間に手を掻くリスクを抑えるために、爪を切って少しでも症状を悪化させないようにしましょう。またちょっとした刺激から、かゆみを増大させないために、軟膏を塗っておくのも忘れないようにしてください。
最後に睡眠の質を上げる努力も大切になります。
睡眠不足による
コルチゾールの過剰分泌による影響・血糖コントロールの乱れ
・副腎への負担が増える二次的に
・炎症反応やアレルギー反応が生じやすくなったり、長引いたりする様々な部分に影響を与えてしまいます。
睡眠不足になってしまうと、アレルギーの症状を長引かせるコルチゾールが分泌されます。手荒れを悪化させる原因になるので、睡眠の質を上げる努力が必要になるわけです。
手荒れを起こしにくい環境づくりとは
美容師が手荒れをよくしていくには、悪化しにくい環境を自分で作っていくこともかなり重要になってきます。環境づくりといわれても、少しわかりにくいでしょう。次が手荒れを抑えるための、環境づくりの一例です。
- 薬剤を刺激の弱いものに変える
- 手荒れに合わせた手袋を使う
刺激がおさえられた薬剤とは、次のようなものを使うといいでしょう。
薬剤を刺激の弱いものに変える
薬剤の種類 | |
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パーマ剤 |
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カラー剤 |
|
パーマ剤の場合は、最低でもシス系のパーマ剤を使いましょう。髪への負担が少ないため、手への負担も最小限になります。さらに負担を抑えたいのなら、カーリング料を使うのがおすすめです。化粧品パーマとも言われており、通常のパーマ剤より、刺激が抑えられています。
- サルファイト
- スピエラ
- GMT
このあたりは、手荒れに不安を感じていても、安心して使えるでしょう。
カラー剤に関しては、ジアミンといわれる成分がよくありません。この成分が入っていない酸性カラー剤をできるだけ使えば、手荒れを抑えられるはずです。とはいえ、これらの薬剤に変えたとしても、頻繁に使っていると手荒れは悪化します。手荒れを悪化させないためには、できる限り薬剤に触れないことが一番大切です。
手荒れに合わせた手袋を使う
ゴム手袋を使うのは必須と、何度も言っていますが、選び方があるのを忘れてはいけません。最低でも次のような選び方をしておきましょう。
- 手荒れの範囲に合わせて手袋の長さを選ぶ
- 値段はできるだけ抑える
- 薄い手袋を選ぶ
手荒れは手だけでなく、人によっては腕まで広がっている可能性があります。そのような人は、30cm以上のロングタイプの手袋を使いましょう。
そしてできるだけ、使ったら捨てる習慣をつけておくのも重要です。あまり長期間使っていると、ゴム手袋の中で細菌が繁殖し、手荒れを悪化させてしまいます。つまり使い捨ての感覚でゴム手袋を使うことになるため、1枚が安いゴム手袋が必須! 値段はできるだけ抑えられると、ストレスなく営業ができます。
またゴム手袋の中で蒸れないようにするために、できるだけ薄めのゴム手袋を選びましょう。
美容師の手荒れは労災として認められるの?
手荒れで困っている美容師の中には、労災を認定してもらおうと考えている人もいると思います。しかし美容師が手荒れで労災を認めてもらうのは、比較的難しいでしょう。労災の認定は、原因がハッキリしていないと認められないからです。
職業性接触皮膚炎・湿疹群の多くは、症状がそれほど強くない、原因物質の特定が難しいなどの理由で、労災保険が申請されていないという状況が考えられます。
また、原因物質が特定できたとしても、アレルギー性接触皮膚炎においては、その原因物質は一般的には有害因子とされていないものが多いため、労災認定されるためには個別に有害因子であることを示さなければならないという問題があります。
つまり手荒れの原因は、「○○という成分」といった具合に証明する必要があるわけです。また普段の生活で手荒れが起こったのか、営業中の業務で手荒れになったのか、ハッキリしないところも問題になります。
この証明ができたときには、美容師の手荒れであっても、労災を認定してくれるでしょう。
ちなみに労災を認定してもらうには、申請する必要もあります。以下のような手順で申請書を提出してください。
- 労災指定病院を見つける
- 保険証を提出しない
- 労災扱いでお願いする
- 労災給付の申請書を作成
- 申請書をかかった病院へ提出
- 自分が加入している民間の傷害保険を確認
労災指定の病院がない場合でも、一度自分が診療料金を立て替えるのであれば、どこでも大丈夫です。とはいえ、労災指定の病院のほうが、やり取りもスムーズでしょう。以下の厚生労働省のページで検索ができるので、探してみてください。
美容師が手荒れを治したいのなら病院に行くのを忘れてはいけない
美容師は手荒れとの付き合い方を、よく心得ていると思う人が多いでしょうが、じつは自己流に対策をしている人のほうが多くいます。
- 手袋を変えたら治った
- ハンドクリームを使ったらよくなった
- カラー剤に慣れれば大丈夫
このような対策では、一度手荒れが悪化してしまうと、元に戻るのは困難になる可能性があります。手荒れを治したいのなら、とりあえず専門の病院に行きましょう。皮膚科が手荒れに関して専門的知識があるので、その医師と相談しながら、手荒れと向き合っていけば症状を抑えられます。
また手荒れで美容師を諦める人もいるでしょうが、これも相性のいい医師が見つかれば、よくなっていく人もいます。諦めずに、病院探しをしてみてください。
もちろん手荒れ対策として、手袋や薬剤の選定も大事です。手荒れを悪化させない努力と、相性のいい病院が見つかれば、徐々に手荒れのストレスとも疎遠になっていくでしょう。