美容室の経営に興味がある人の中には、美容師の経験が長く、美容業務に自信がある人も多いでしょう。確かに経験があったほうがスムーズですが、経営で成功するなら別の話。ポイントをまとめてみたので、失敗したくないなら参考にしてみてください。また経営を始める前の準備物も、失敗予防のためのポイントです。その情報もまとめてあります。
美容室経営を検討するうえで知っておきたいこと
美容室を経営しようと考えている人は、美容師として雇われていた時より、考える内容が違うところを意識しておきましょう。
特に開業するのなら、経営が厳しめに試算しておいたほうが無難です。
美容室の経営について詳しく知ってもらうためにも、経営の現状やメリットなど、具体的にまとめてみました。
コロナで厳しい?美容室経営の現状
現在ではコロナの影響で、お店に来るお客様が減っているところが多くあります。
今まで美容室の経営が落ち着いたベテランであっても、コロナの影響でお客様の流れが読めなくなった人は少なくありません。
新型コロナウイルス感染症の影響が出始めた2020年以降の支出状況をみると、1回目の緊急事態宣言が出された4月は大幅に減少し、その反動と続く外出自粛等の影響で5月から秋頃にかけて例年と異なる動きがみられました。また2021年に入ってからも、2回目の緊急事態宣言下の3月は例年ほど増加せず横ばいとなる等、影響が続いていることがうかがえます。
引用 │ 経済産業省『最近いつヘアカットに行きましたか?コロナ禍での理美容業を振り返ります』
このように外出禁止だと言われれば、美容室のファンになってくれたお客様でも、来店するのを躊躇ってしまうからです。
そもそも美容室は、お客様が来店して初めて売上が上がる営業スタイル。
コロナは今まで通りの経営をしていると、むしろ売上が半減する恐れもあるので、慎重に経営ができるようになっておく必要があります。
美容室経営のメリット・デメリットとは
美容室を経営するのはやめておこうか…。
開業を目指している美容師の中には、少し不安になるかもしれません。
確かに美容室の経営は甘くありませんが、メリットもあります。
美容室経営のメリット
- 自分の理想に近い経営や営業ができる
- 収入に限度がない
- 人間関係が広げられる
今働いている美容室に未来を感じられない…と思うのなら、あなた自身が経営者となってみましょう。
美容室を盛り上げられる自信がある人の場合は、開業はかなりメリットです。
もちろん成功すれば、収入も制限がありません。
美容師として働きたいけど、今の生活が苦しいのなら、経営側に回ってみるのもいいでしょう。
また、今よりも人との関わりが濃くなるのも美容室経営の醍醐味です。
付き合う人が変わるので、そこに魅力を感じられる人も、経営向きの可能性がありますよ。
美容室経営のデメリット
- 思ったよりもリスクが高め
- スタッフ間の人間関係にも注視しないといけない
- 休みがなくなる可能性もある
ただし、経営者側になったからといって、良いことばかり起こるわけでもありません。
事業が失敗すれば、全てあなたの負債となるので、そのあたりも考慮しておきましょう。
もちろん上記で紹介したように、人間関係が増える代わりに、うまく人との付き合いを濃くする手間がかかります。
特に美容室は、美容師がいないと成立しません。
人間関係に手を焼くのが好きなら、傾斜向きなので挑戦してみましょう。
美容室経営における売り上げと年収
経営をする上で大事なのが、売り上げです。
美容室を経営する側になりたい人の多くの理由は、年収をアップさせたいから。基本的に売り上げの2割ほどが経営者の収入になるともいわれています。
売り上げが少なくなってしまうと、美容師時代よりも収入が減るリスクもあるわけです。
「人件費上昇」も株式会社(有限会社も含む)において36.7%と高くなっている。
引用 │ 厚生労働省『美容業の実態と経営改善の方策(抄) 』平成30年10月31日
しかも現状は、不景気になってきており、美容師の給料自体の低賃金が注目されています。
経営者側は美容師が辞めないように、人件費を上げているのが現状です。
また、最低賃金も上がっている影響もあり、売上アップを目指さないと、経営者となっても苦しくなってしまうでしょう。
経営指標
従業者1人当たりの売上高(月間):533 千円
イス1台当たりの売上高(月間):481 千円
引用 │ 日本政策金融公庫『業種別創業ポイント集 その②』平成24年11月
ちなみに、美容室の売り上げに関する目安は、上記のように様々です。
少なくとも美容師というのは技術職。お客様が増えてきたら、働く人を増やしていくため、美容師を雇い入れて始めて売り上げが上がっていきます。
もちろん美容師が増えれば、人件費も増えていくので、売り上げが下がらないように意識しましょう。
1人で行う個人経営とスタッフを雇う場合の違い
美容室を経営したい人の中には、美容師を雇わず、個人経営したい人も少なくありません。
気を遣わなくていい反面、美容師を雇う時と、大きな違いがあるのも知っておきましょう。
個人経営とスタッフを雇う違い
- スタッフ間の人間関係の違い
- 労働量の違い
- お金の管理の違い
美容師を雇うと、その人との人間関係を意識しないといけません。
もちろん個人経営なら、お金の問題を意識する必要が少なくて済みます。
美容師を雇えば、給料から税金、保険などの手間がかかるのも事実です。
それが嫌なら個人経営をすればいいですが、その代わりに、労働量を意識してみてください。
個人経営だと、お客様が増えたとしても、あなた1人で全て対応する必要があります。
ただし美容師を雇っていると、その人に任せられるので、労働量が少なくなるはずです。
また、経営をするうえでやりたいことがあるのなら、雇った美容師と一緒に作業ができるでしょう。
しかし個人経営は、できる範囲が狭くなるのも問題です。
美容室経営に必要な準備
美容室を経営するのなら、準備をしないと営業をスタートできません。
以下の4つは予め用意できるものなので、覚えておきましょう。
- 資格
- 手続き
- 資金
- 物件
どれも開業する時に必要なものなので、独立を目指す人は要チェックです。
美容室開業に必要な資格
まず美容室を経営するのなら、少なくとも管理美容師がいないといけません。
管理美容師とは、以下のように美容室の衛生管理に関わる資格です。
美容師法第12条の3により美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理美容師を置かなければならないとされています。
引用 │ 理容師美容師試験研修センター『管理理容師・管理美容師の概要』
経営をするためには、資格が必要なら面倒だしどうしよう…。
資格と聞くと面倒になるのもわかりますが、実際のところ、管理美容師はそこまで難しい資格ではありません。
- 公衆衛生⇒4時間
- 美容室の衛生管理⇒14時間
上記の内容の講習を受けるだけです。
美容師を雇う予定があるのなら、管理美容師の資格は必須。美容師の免許を取得して、3年以上経過しているのなら、挑戦しておきましょう。
美容室開業に必要な手続き
美容室を開業するのなら、以下のような手続きも必要です。
届け先 | 届内容 |
---|---|
保健所 | 美容所開設届(衛生関係) |
税務署 | 開業届(税金関係) |
都道府県税事務所市町村役場窓口 | 開業等届出書(税金関係) |
消防署 | 防火対象物使用開始届出書(防火関係) |
ハローワーク | 労働保険関係成立届出書など(スタッフ関係) |
いきなり開業というわけにもいかないので、独立前に各施設に問い合わせて、どの書類が必要なのか聞いておきましょう。
美容室開業に必要な資金
資金を用意するのも、開業する上で大事なポイントです。
思ったより多額なお金が必要なので、早くからお金を貯めるなど、負担を少なくするためにも準備しておきましょう。
- 内装費用
- 敷金礼金などの取得費
- 美容設備にかかる費用
- 家賃、光熱費、人件費、広告費などの運転資金
開業するための資金の一例です。
内装費用は、新築だと坪単価で30万円前後。居抜きの建物を取得するのなら、その半額ほどの資金を用意しましょう。
また、敷金礼金などの初期費用なら、建物を建てる地域の家賃相場の1年分ともいわれています。
これも最初に必要な資金です。
内装が決まれば、シャンプー椅子などの設備にもお金がかかります。
もちろん最初は売上の見通しが足りません。
家賃などの固定費は、支払えない前提で、予め用意しておかないと、赤字になって倒産なんて話もよく聞きます。
美容室開業に向けた物件選び
準備をするのは、資金だけではありません。
以下のように物件選びを慎重にして、これからの売り上げがアップできるように、分析する必要もあります。
- ターゲットに合わせた立地
- 予算内に抑えられる場所
- 規模に合わせた土地の広さ
など
美容師は立地が大事。よく耳にしますが、意味がよくわかっていないのなら、まだ開業するのは辞めておきましょう。
開店する場所の分析ができて、自分の経営の理想と近いところを見つけるところから始めてみてください。
経営難回避!失敗する美容室経営の特徴を知る
経営をするのなら、リスクは付き物です。
よくある経営難を知っておくと、開業前に準備でき、リスクを最小限に抑えられます。
どんな失敗が起こりうるのか、以下を見ておきましょう。
経営を維持する資金の不足
美容室を開業して、よくある失敗のひとつが、資金ショートです。
つまり経営を維持するためのお金が足りなくなること。売り上げがうまく上がらず、開業してからずっと赤字のままだと、この失敗が起こってしまいます。
この失敗を起こす美容師の多くが、技術力に自信がある人です。
勢いで開業するのはいいですが、売り上げと支出のバランスを、開業前から計算しておきましょう。
開業するお店の周りに、美容室があるのなら、そこを参考にするのもいいですね。
真似から始めると、それを目安に経営のパターンがわかってきます。
経営の知識が身についていない
美容師は職人気質です。
ひとりでも売り上げがアップできるので、経営という見方ができない人が少なくありません。
特に個人経営だから安心という人は要注意です。
営業のやり方や、マーケティングなどの知識を覚えておきましょう。
個人経営でも美容師を雇うスタイルでも、どちらも人を動かす能力が試されます。
技術と経営は違うという自覚がないと、赤字が続いて資金ショートするリスクが上がるでしょう。
宣伝広告費がない
美容室は内装が大事。このように思う人は、貯めたお金の全額を、建物の内装に使ってしまう美容師も少なくありません。
確かに美容室は雰囲気も大事ですが、広告費を視野に入れていないと損をします。
開業して始めは、新規のお客様を取り込む必要があるからです。
資金の計算をしてみて、広告費が少ないのなら、見直しをしておきましょう。
中長期でも必ず必要になる経費なので、侮ってはいけません。
また、クーポンで集客する方法だけに注力するのも要注意です。
クーポンにかかる広告費から脱却できず、経営している間、ずっと広告費が発生するリスクもあります。
集客できる方法は、どんな方法でも試せる余力も残しておくのがポイントです。
マネジメント力の不足
美容師を雇った場合、トップスタイリストのように、実力が高い美容師が現れるケースはよくあります。
その実力が高い美容師ばかりに頼った経営をしていると、これも失敗する可能性大です。
経営には組織を作る仕組みが大事。1人だけでなく、多くの人を巻き込んで、営業ができるようにしましょう。
トップスタイリストばかりに頼っていると、その人が抜けた時に大変なことになるからです。
教育にも力を入れて、何かあった時でも対応できるように、仕組みを用意してください。
美容室経営を成功させるためのポイント
何度も言っているように、美容室の経営は美容師時代の経験とは、別のところにポイントがあります。
独立をした経験がない人のために、成功させるポイントをまとめてみました。
客単価や経費など数字を把握する
経営で最も大事なのは、数字を信じること。
経験がものをいう美容師の世界とは違うため、最初な躊躇してしまうでしょう。
数字と言われてもよくわからないのなら、最初は客単価の統計を取ってみてください。
美容師であれば、お客様1人に時間をかけて、満足いただけるかどうかを見ていたはずです。
しかし時間をかければ、売り上げが上がるわけでもありません。
何が原因で売り上げが伸びないのか知るためにも、統計を残しておきましょう。
そのデータを見て判断すると、主観ではわからない原因や対策が見えてくるはずです。
客単価を上げる
経営で最も大事なのが売り上げです。
収入に直結する部分なだけに、注目してみておきましょう。
特に客単価が大事です。
お客様の単価が高いと、来店数が減ったとしても相殺されます。
逆にたくさんのお客様が来店すると、うなぎ登りで売り上げが上がっていくでしょう。
どのように客単価を上げるかイメージできない…。
そう思う人は、来店する頻度が高いファンになってくれたお客様を見つけてみてください。
あなたの美容室が好きで、信頼してくれている可能性が高いでしょう。
つまり客単価をアップさせやすい人かもしれません。
そんなお客様を優遇する仕組みを作るなど、営業をかけても喜んでもらえる仕組みを模索してみるのが大事です。
上記でも紹介したように統計を残しておくと、客単価が上がりやすいお客様が誰なのか、イメージしやすくなります。
数字を見て、客単価が上げられる基盤を作っておきましょう。
物品販売に注力する
客単価をアップさせるためには、施術の提案だけでなく、物品販売にも力を入れてみましょう。
もともと美容師は技術職。1人で相手ができる限界が決まっています。
ところが物品販売だと、お客様が商品を買いに来てくれるだけで売り上げがアップできるでしょう。
効率的に客単価アップが期待できるので、商品の知識は最低でも持っておく必要があります。
サービスの向上
売り上げをアップさせるためには、お客様の満足度が大事です。
そこでサービスの向上は必須になります。
サービスを向上するためには、スタッフにスキルもアップしないといけません。
- 教育カリキュラムを見直す
- やりがいが感じられる仕組み
- 頑張れば報われる福利厚生
など
あくまで一例ですが、スタッフ目線の経営をしないとわかりません。
美容師が働きやすい環境を作れば、自然とサービスの向上が目に見えてくるはずです。
スタッフが働きやすい環境をつくる
スタッフについて上記で紹介してきましたが、働きやすい環境を作るのも大事です。
美容師間でギスギスした関係が続くと、どうしてもストレスを感じて、お店を辞めてしまう人が増えてしまいます。
この、辞めてしまうのが最悪のシナリオです。
せっかくスキルを磨かせた美容師が辞めると、教育コストや手間など、全てが無駄になってしまうから。できるだけ満足できる環境を作ったほうがいいのは、このためです。
- 休日の確保
- ストレス緩和などの施策
- スタッフ間のローテーション
など
特に難しいことは考えずに、自分が働いていて楽しい職場はどのようなものなのか、立ち止まって考えてみてください。
経営をする側は、自由にお店の環境が変えられます。
美容室経営の経験者に話を聞く
美容室の経営について、詳しい内容が知りたい人は、美容室の経営をしている人を探してみてください。
その人と実際に会って、経験談を聞くだけでもかなり勉強になります。
少なくともよくある失敗がわかるので、初歩的なミスが減らせられるはずです。
周りに美容室経営者がいないのなら、TwitterなどのSNSをうまく活用してみましょう。
実際に出会えるという人も少なくないので、要チェックです。
経営関連の本を読む
気軽に経営の勉強をしたいのなら、本を参考にするのもおすすめです。
もちろん基本的な内容となりますが、知っておいて損はありません。
上記でもSNSをおすすめしましたが、中には悪質なアカウントも存在しており、リスクが付き物です。
しかし本なら、そんな有害な情報もありません。
間違いない情報が詰まっているので、隙間時間に読んでしまいましょう。
美容室の経営は美容師時代の経験とは別で判断しよう!
お店を自分で作って成功するのは、かなり一部だと言われています。
そもそも美容師時代に注目されて、実際に人気者だった人が経営者になると、全員が成功する世界ではありません。
それは美容師時代に経験したものと、経営で重要になる部分が違うからです。
失敗しないためには、美容師時代に働きながら、情報収集して予め準備しておきましょう。
インプットの時間を増やせば、失敗も最小限に抑えられます。
ただし、インプットするだけでは話が進みません。
ある程度の自信がついてきたなら、行動するのも大事なので、挑戦する気持ちも忘れないでくださいね。
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